2010年 08月 03日
『海老一』と大きく書かれた反重力装甲漁船が、ホバー艇『リトルピッグ』を先導するようにスリンガーランドの砂漠を飛んでいる。 リトルピッグは報酬次第でどんな仕事でも引き受けるピースメイカー『バズ&フライヤーズ』の船で、今回は「逃がし」の仕事だが、それを専門としているチームがことごとく断っているようなヤマらしい。 リーダーであるバズ・ウェインはデコイを使って犠牲者が増えることを懸念し、気心の知れた漁師の『海老一』を護衛に雇い、ストレートに移動する方法を選択した。 『海老一』は、海老原一善、三郎の親子2代で仕事をしている凄腕の漁師だ。しかも、今回は同盟関係にあるチームから預かっている若者C.B.JIMも修行として同行している。 「逆光でよく見えません!……速い!撃ってきた!下の船を狙ってる!」 船首で砲手をする一善は相手を認識し、眉間にしわを寄せながら正確に機銃を撃ち始めた。 「こりゃマズイぞい。」 その掃射を軽くかわしながら、横をすり抜けた機体を見て、三郎も息をのんだ。 「魔女か!?」 被弾しながらも速度を落とさず、リトルピッグも対空砲で反撃を始めていた。 「魔女やとぉ!?」 「ヤバイな……」 揺れるホバー艇の中で森やんとバズはつぶやいた。 「何だそいつは?」 「俺らは守りのプロ、奴は殺しのプロ。それも超一流。追っ手は確実にアンタを消したいらしい……。」 「あんた達には大金を払ってるんだ、大丈夫だろうな!?」 「いや、魔女は想定外だ。甘く見ていたつもりはないが、ツケを払う必要があるかもしれん。」 「…………!?」 「な~に、俺らだって、あないなズベ公にそう簡単にはやられへんわ。」 「JIM、次の攻撃をかわしたらお前は逃げろ。」 「何言ってるんですか!?」 「お前に何かあったら海老一の名に傷が付く。お前ならバイクで逃げ切れるだろう。」 「そんなにヤバイ相手なら俺も一緒に戦います!」 「ダメだ!俺たちはバズに大きな借りがあるが、お前を巻き込むわけにはいかん。」 「JIM、お前はいい筋しとる。ええチームを作れよ。孫とも仲良くしてやってくれい。」 「一善さん……」 「最悪の場合、俺たちがデコイになってアンタを隠す。」 「あんた達は……!?」 「俺たちには俺たちの流儀がある。万一の時は海老一の家族に報酬を渡してやってほしい。」 「わ、わかった。約束する。」 「いいねえ。この時代、約束とか信頼がなきゃ人間やってる意味がねえもんな。俺らの生き様を見といてくれよ。」 バズはニヤリとして操縦桿を強く握りなおした。
by dokurozaru
| 2010-08-03 22:29
| フランケンシュタイン
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『ドクロの心臓』は俺がカッコイイと思う人、マンガ、映画、ロックなどを混ぜ込んだ架空物語を造形して遊ぶ世界です。マイオリジナル同好会・小林誠同好会 by dokurozaru カテゴリ
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