2010年 04月 01日
『海老一』と大きく書かれた反重力装甲漁船が、ホバー艇『リトルピッグ』を先導するようにスリンガーランドの砂漠を飛んでいる。 リトルピッグを繰るのは、報酬次第でどんな仕事でも引き受けるピースメイカー『バズ&フライヤーズ』 黒人のバズ・ウェインをリーダーとする多国籍チームだ。 今回は、ある人物を隣の都市へ無事に逃がすという仕事だが、この人物はかなり厄介な組織に追われているらしく、運び屋・逃がし屋を専門としているチームがことごとく断っているようなヤマらしい。都市内ならともかく、スリンガーランドと呼ばれる無法地帯を抜けることも併せると、かなりの実力がなければ引き受けられない仕事だった。 バズはデコイを使って犠牲者が増えることを懸念し、気心の知れた漁師の『海老一』を護衛に雇い、ストレートに突破する方法を選択した。 『海老一』は、海老原一善、三郎の親子2代で仕事をしている凄腕の漁師だ。今回は同盟関係にあるチームから預かっている若者C.B.JIMも修行として同行している。こんな大きな仕事はまたとない貴重な経験になるだろう。ただし、無事に仕事が終わればの話だ。バズは、この2チームなら完遂できるという自信の片隅に、悪い予感を拭い去れずにいた・・・・。 明け方までわずかに仮眠をとり、空が曙色に染まり始める頃、移動を再開した。 「4時の方向に機影発見!」 長く突き出した船首で見張りをしていたJIMが朝日影の方向を見て叫んだ。 と同時に三郎がその方向に旋回を始めた。 「どんなヤツだ!?」 「逆光でよく見えません!・・・速い!撃ってきた!下の船を狙ってる!」 船首で砲手をする一善は相手を認識し、眉間にしわを寄せながら正確に機銃を撃ち始めた。 「こりゃマズイぞい。」 その掃射を軽くかわしながら、横をすり抜けた機体を見て、三郎も息をのんだ。 「魔女か!?」 被弾しながらも速度を落とさず、リトルピッグも対空砲で反撃を始めていた。 「魔女やとぉ!?」 「ヤバイな・・・」 揺れるホバー艇の中で森やんとバズはつぶやいた。 「何だそいつは?」 「俺らは守りのプロ、奴は殺しのプロ。それも超一流。追っ手は確実にアンタを消したいらしい・・・。」 「あんた達には大金を払ってるんだ、大丈夫だろうな!?」 「いや、魔女は想定外だ。甘く見ていたつもりはないが、ツケを払う必要があるかもしれん。」 「・・・・・。」 「な~に、俺らだって、あないなズベ公にそう簡単にはやられへんわ。」 リトルピッグに近づけまいと海老一は魔女の行く手を阻むように攻撃を仕掛けるが、魔女の機体は軽やかにかわしながら2機に向けて攻撃を繰り返していた。 「JIM、次の攻撃をかわしたらお前は逃げろ。」 「何言ってるんですか!?」 「お前に何かあったら海老一の名に傷が付く。お前ならバイクで逃げ切れるだろう。」 「そんなにヤバイ相手なら俺も一緒に戦います!」 「ダメだ!俺たちはバズに大きな借りがあるが、お前を巻き込むわけにはいかん。」 「JIM、お前はいい筋しとる。ええチームを作れよ。孫とも仲良くしてやってくれい。」 「一善さん・・・・」 「最悪の場合、あんただけ別にピックアップさせることになるかもしれん。」 「え!?」 「そないな手も打ってあるんか?」 「ああ、今回はもう一本保険を掛けておいた。俺たちがデコイになる最悪の手だ。」 「あんた達は・・・!?」 「俺たちには俺たちの流儀がある。だが、万一の時は海老一の家族に報酬を渡してやってほしい。」 「わ、わかった。約束する。」 「いいねえ。この時代、約束とか信頼がなきゃ人間やってる意味がねえもんな。俺らの生き様を見といてくれよ。」 バズはニヤリとして操縦桿を強く握りなおした。
by dokurozaru
| 2010-04-01 13:26
| フランケンシュタイン
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『ドクロの心臓』は俺がカッコイイと思う人、マンガ、映画、ロックなどを混ぜ込んだ架空物語を造形して遊ぶ世界です。マイオリジナル同好会・小林誠同好会 by dokurozaru カテゴリ
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